補語が日本人には使いにくい理由
英語を自分で話そうとすると、楽に出てくるものと、なかなか出てこないものがあることに気づきます。
次のような文は、比較的楽に出てくると思います。
I run.
I am a boy.
She is happy.
I love her.
He gave me a present.
次はどうでしょうか。
He died young.
彼は若くして死んだ。
She came home exhausted.
彼女は疲れて帰ってきた。
I found the door open.
ドアが開いていることに気づいた。
文字で読む分には、なんてことないですね。
ただ、ゼロから組み立てて、この英文に行き着くのは、難しいのではないでしょうか。
日本人なら、次のような英作になりがちなのではないかと思います。
若くして → 時間関係にする
He died when he was young.
疲れて → 表現を動作に変える
She came home feeling tired.
ドアが開いていた → 節にする
I found that the door was open.
間違いではありません。
ただ、元の簡潔な表現に比べ、冗長にはなります。
なぜ日本人には、He died young.のような英文は、作りにくいのでしょうか。
おそらく、上記のような日本語訳に惑わされるからでしょう。
また、英語の「補語」に、そのまま対応する日本語がないことも原因の一つです。
「補語」については、学校では、次のような例文で習ったと思います。
She is angry.
彼女は怒っている。
She looks angry.
彼女は怒っているように見える。
She became angry.
彼女は怒った。
いわゆるSVCの文型ですね。
真ん中の動詞だけが違い、sheとangryは同じです。
ここで、いったん「補語」という言葉は忘れて、上の例文を「対象+状態」と考えてみてください。
対象:she
状態:angry
どの文でも、「彼女」が「怒っている状態」であることに、変わりありません。
これらの文は、
人・物を置く → その状態を後ろに足す
という発想のもとに作られています。
これは、
She walked away angry.
彼女は怒って立ち去った。
のような文でも同じです。
She walked away
→ そのときSheは?
→ angry
→ She walked away angry.
She walked awayで、文として成り立っている点が、他の3つと異なりますが、「対象+状態」という発想は同じです。
「立ち去った」と言った後で、対象の状態を「怒って」と後ろにつけ足しています。
冒頭の文も同様の発想になります。
He died
→ そのときHeは?
→ young
→ He died young.
She came home
→ そのときSheは?
→ exhausted
→ She came home exhausted.
対象を置いて、その状態を言えばいいだけです。
非常にシンプルです。
この発想を持つと、発話が楽になります。
練習に、他の例も見てみましょう。
She returned safe.
彼女は無事に帰ってきた。
She returned
→ そのときSheは?
→ safe
→ She returned safe.
He stood silent.
彼は黙って立っていた。
He stood
→ そのときHeは?
→ silent
→ He stood silent.
The children came home hungry.
子どもたちはお腹を空かせて帰ってきた。
The children came home
→ そのときThe childrenは?
→ hungry
→ The children came home hungry.
He woke up sick.
彼は目を覚ますと気分が悪かった。
He woke up
→ そのときHeは?
→ sick
→ He woke up sick.
She left happy.
彼女は満足して帰っていった。
She left
→ そのときSheは?
→ happy
→ She left happy.
ひるがえって、日本語から出発すると、「若くして」「疲れて」「無事に」と考えて、時間関係、動作、副詞など、別の表現になってしまいがちであること、先に述べた通りです。
日本語から英語を組み立てようとすると、かえって複雑になります。
英語の発想は、シンプルに、
人・物を置く → その状態を後ろに足す
これを身につけたいですね。
目的語の「状態」を後ろに足す
I found the door open.のような文も、同様です。
いわゆるSVOCの文型ですね。
いくつか例を見てみましょう。
I found the door open.
ドアが開いているのに気づいた。
I found the door
→ そのときthe doorは?
→ open
→ I found the door open.
I want everything ready.
準備はすべて終えて欲しい。
I want everything
→ そのときeverythingは?
→ ready
→ I want everything ready.
The news made him angry.
そのニュースに彼は怒った。
The news made him
→ そのときhimは?
→ angry
→ The news made him angry.
命令形でも同じです。
Paint the wall red.
壁を赤く塗れ。
Paint the wall
→ そのときthe wallは?
→ red
→ Paint the wall red.
Leave me alone.
放っておいて!
Leave me
→ そのときmeは?
→ alone
→ Leave me alone.
使役動詞の説明で習った、下記例文も同様です。
I had my hair cut.
髪を切った。
I had my hair
→ そのときmy hairは?
→ cut
→ I had my hair cut.
I had my purse stolen.
財布を盗まれた。
I had my purse
→ そのときmy purseは?
→ stolen
→ I had my purse stolen.
I managed to make myself heard.
なんとか聞こえるように言った。
I managed to make myself
→ そのときmyselfは?
→ heard
→ I managed to make myself heard.
英文を読んでいると、よく見かける、次の文も同様です。
We found ourselves surrounded by reporters.
気がつくと記者たちに囲まれていた。
We found ourselves
→ そのときourselvesは?
→ surrounded by reporters
→ We found ourselves surrounded by reporters.
「結果」を状態で表す
教科書で、「結果構文」として説明される、下記のような文も、日本人は苦手です。
He wiped the table clean.
彼はテーブルを拭いてきれいにした。
英語の構造は、前節のSVOCとまったく同じです。
He wiped the table
→ そのときthe tableは?
→ clean
→ He wiped the table clean.
なんの問題もないように見えますね。
ところが、いざ自分で発話しようとすると、
He wiped the table and made it clean.
のような英作をやってしまいがちです。
「拭いた」「きれいにした」という、日本語が影響して、ややこしくなる典型例ですね。
他の例も出しておきます。
The river froze solid.
川は、凍って固まった。
The river froze
→ そのときthe riverは?
→ solid
→ The river froze solid.
She hammered the metal flat.
彼女は金属を叩いて平らにした。
She hammered the metal
→ そのときthe metalは?
→ flat
→ She hammered the metal flat.
with+O+Cも「対象+状態」で考える
英文法の難所「with O C」も、同じように理解してしまえば、楽になります。
He stood there with his arms folded.
彼は腕を組んでそこに立っていた。
He stood there
→ そのときhis armsは?
→ folded
→ He stood there with his arms folded.
腕は「foldedの状態」と、「対象+状態」で作られていることが分かります。
発話する際は、「his armsとfoldは、能動関係?受動関係?」と関係に悩むより、腕は「foldedの状態」と、見たまま発話する方が、処理が軽く、楽です。
他にも、下記のような例が挙げられますが、すべて、同じ発想で対応することができます。
with his eyes closed
with the door open
with the lights on
with his hands in his pockets
with tears running down her face
「対象+状態」の難しい表現
最後に、少し難しめの英文をまとめておきます。
これらの文も、すべて、「対象+状態」で作られています。
なかなか自分で再現するのは難しいかもしれませんが、英語の発想を学ぶのに役立つのではないかと思います。
She had her hands full with the children.
子どもの世話で手いっぱいだった。
He drank himself unconscious.
彼は意識を失うまで酒を飲んだ。
She laughed herself sick.
彼女は気分が悪くなるほど笑った。
The news left me wondering what to do next.
その知らせを聞いて、次にどうすればいいのか考え込んでしまった。
She likes her coffee strong.
彼女は濃いコーヒーが好きだ。
「彼女は濃いコーヒーが好きだ」なら、ほとんどの人は、She likes strong coffee .としますね。
She likes her coffee strong.とするには、どっぷりと英語の発想に浸かりきった後でないと、無理だと思います。
He drank himself unconscious.と、She laughed herself sick.も、日本人には難解です(結果構文)。「意識を失うまで酒を飲んだ」「気分が悪くなるほど笑った」という日本語訳からは、まず、この英文は出てきません。
この手の表現は、結構目にしますので、英語の発想を学び続ける姿勢が大事ですね。
「話すため」に文法を組み直す
以上、「対象+状態」の表現について、解説しました。
お気づきのように、これらは、学校では、
SVC
SVOC
付加的な補語
使役動詞
with+O+C
など、別々の項目として教えられたものです。
しかし、話し手からすると、
人・物を置く → その状態を後ろに足す
という同じ操作です。
文法を思い出すより、圧倒的に、軽い処理で済みますね。

