英語が速くて聞き取れない。
知っている単語なのに、聞き取れない。
どうしたらいいのか。
調べてみると、英語には音変化というものがあり、did you がディジュに、want toが wannaになるらしい。
それでは、と、ディジュを練習してみる。
でも、didjaもある。
gonna、gotta、kindaというのもある。
他にも、連結、脱落、同化のような現象もある。
一つ一つ、練習してみる。
際限がない。
「これ、全部覚えるの?」
「早口の練習なんて、必要ある?」
このような経験をしたことはないでしょうか。
聞き取れない根本的な原因は、音変化ではなく、リズムにあります。
リズムが違えば別の言葉
英語と日本語では、リズムがまったく違います。
例えば、「マクドナルド」という言葉一つとっても、
英語では、
・McDonald’s /məkˈdɑːnəldz/
McDonald’sの、「Do」の部分に強勢があり、長く、強く、高い音程で発音されます。
他は、短く、弱く、低い音程。
手で拍子をとると、Doのところで、「タン」と、一回叩いて終わり。
これに対し、日本語では、「マクドナルド」と、長さ、強さ、音程は、ほぼ均等に発音します。
拍子をとると、「タタタタタタ」と、6回。
実際に手を叩いてみると、「タン」と「タタタタタタ」では、まったく違う言葉に聞こえること、実感いただけると思います。
この違いが、日本人が、
・英語を聞き取れない
・話しても、伝わらない
大きな原因になっています。
英語を話す練習を始めると、この違いが、如実に出ます。
多くの人は、たとえばオーバーラッピングしてみると、自分が遅れがちなことに気づくと思います。
オーバーラッピング:英語の音声にぴったり合わせて読む学習法
これは、「慣れ」以前に、日本語の拍子で話していることが原因です。
「タタタタタタ」では、どうしても時間がかかるので、「タン」の英語についていけません。
英語を聞くと、「圧縮されている」ように感じませんか?
日本人は、「タタタタタタ」の拍子が身についてしまっているので、克服するのが大変です。
英語の拍子は、日本人には、かなり「短く言っている」ように感じられて、心配になります。
また、「タン」を強調しすぎではないかとも思います。
が、それくらいでちょうどいいのです。
オーバーラッピングで、英語についていけるように、練習することをお勧めします。
短く言う練習をするのは、変な感じがするかもしれませんが、スピーキングの第一歩です。
また、自分で言えるようになると、リスニングも改善します。
英語は「強」と「弱」で進む
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
有名なマザーグースのハンプティダンプティ。

強弱を表すと、次のようになります。
強勢部で手を打ち、間隔を一定にして、声に出してみてください。
HUMPty DUMPty SAT on a WALL
HUMPty DUMPty HAD a great FALL
a greatのところが、少し忙しくなりますね。
ここは、圧縮され、弱く、短くなります(弱音部)。
注意点は、早口言葉ではない、ということです。
早口言葉では、逆に強勢が乗ってしまいます。
そうではなく、「ぐっ」と沈む感じです。
音程も低くなります。
「ぐっ」と沈むリズムを作れると、言いやすくなるはずです。
逆に、速く言おうとして、強くなってしまうと、リズムが崩れてうまく言えない。
声に出して、体感してみてください。
強勢部と共に、リズムを形作っていることを感じ取れると、グッドですね。
3行目は、もっと忙しくなります。
ALL the king’s HORses and ALL the king’s MEN
急がないと、間に合わない感じがしますね。
ただの早口ではダメです。
the king’sとand は、圧縮され、「ぐっ」と沈みます。
他は、充分に長く読みます。
「ぐっ」のところで、しっかり拍を感じるようにしてください。
強 →「ぐっ」→ 強 →「ぐっ」のリズムです。
リズムに乗れると、慌てなくても、自然に間に合うようになります。
COULDn’t put HUMPty toGETHer aGAIN
4行目は、putが難しいです。
これは、これまで以上に、ぐっと沈むことを意識して、明確に拍を感じ、そこに「置いてくる」感じで、putと言います。
このputは、言うのも難しいと思いますが、聞き取りも難しいです。
同じような例を挙げると、
Olivia Newton-John の名曲『Have You Never Been Mellow』の最後、
Have you never let someone else be strong
ここでは、let と be が、弱く、短く、大きく沈みます。
音程も低いですね。

Bruce Springsteenの『Born in the USA』では、
Born in the U.S.A.
I was born in the U.S.A.
のI wasがそれに当たります。
面白いことに、「I was」に気づかず、「Born in the U.S.A.」の繰り返しに聞こえることもあるようです。
I wasなんて、簡単な英語のはずですが、「知っているのに聞き取れない」の典型ですね。

このように、「聞き取れない」「英語が速い」と感じるのは、弱音部である場合が多いようです。
冒頭のディジュやwannaも、弱音部に当たります。
ただ、ここで挙げた例、put、let、be、I wasは、音が変化しているわけではありませんね。
音が変化したものだけではなく、弱音部全般が、リスニング、スピーキングの難所になります。
「弱→強」のリズム
Humpty Dumptyは、「強→弱」でしたが、「弱→強」のリズムも普通にあります。
これも、日本人は、苦手。
i don’t KNOW what you’re TALKing aBOUT.
what do you MEAN?
i can’t DO it.
スムーズに話せるでしょうか?
話せないことは聞き取れず、リスニングの障害になります。もし難しいと感じるようでしたら、よく練習してみてください。
「弱→強」の流れは、歌でも頻繁に見られます。
when i FIND myself in TIMES of TROUble
MOther MARy comes to me
(The Beatles – Let It Be)

WHEN the NIGHT has COME
and the LAND is DARK
and the MOON is the ONly LIGHT we SEE
(Ben E. King – Stand By Me)

because MAYbe
you’re GONna be the one that SAVES me
(Oasis – Wonderwall)

歌で聞くと、
強勢部は、強く、長く、跳ねる
弱音部は、弱く、短く、沈む
がよく分かります。
Have you never let someone else be strongでも、strongが非常に跳ねますね。
跳ねるために、直前のbeが、「ぐっ」と沈んでいます。
クイーンの有名なフレーズ、
WE WILL, we WILL ROCK you
(Queen – We Will Rock You)
では、「沈む→跳ねる」の感じがよく出ています。
最初のWEは強勢ですが、2回目のweは弱音で、「ぐっ」と沈む。
それから、WILL ROCKでパーンと跳ねる。

ぜひ、声に出して歌い、体感してみてください。
リズムは身体で覚える
リズムは、身体的なことなので、その習得にはトレーニングが必要です。
知識だけでは学べません。
とにかくたくさん聞いて、話して、歌って、体得していくようにしましょう。
概して、日本人がやってしまいがちなのは、
・強勢部だけを強くする
・速く言おうと、すべてを同じ強さにする
速いように聞こえて、強勢部は充分に長く発音されます。
すべてを短くする、日本の早口言葉とは、そこが違います。
強 →「ぐっ」→ 強 →「ぐっ」
長 → 短 → 長 → 短
高 → 低 → 高 → 低
このリズムです。
このリズムで話せるようになると、リスニングも改善します。
話し手は、リズムに乗って話し、聞き手は、そのリズムに合わせて聞きます。
同期できることが大事です。
通信システムが、プロトコルを合わせてから交信するのに似てますね。
冒頭の音変化については、弱音部が圧縮を受けた結果、起きることがあります。
これらは、ネイティブ同様に、自分で体験してみるといいでしょう。
did you → ディジュ
want to → ワナ
know him → ノウイム
弱く、短く、低くするときは、このように圧縮せざるを得ないので、自然に変化するようになります。
また、リズムと発音は一体なので、発音も改善されます。
たとえば、日本人は、子音で終わる発音が苦手で、母音をつけてしまいがちです。
それが、英語のリズムの中では、母音は落とさざるを得なくなります。
具体的には、さきほどの、
couldn’t put Humpty together again
このputに母音をつけて、「プット」と言うのは、逆に難しいと思います。
P音とT音を発音するだけで精一杯。
でもそうすると、英語らしい発音になります。
英語のリズムは、身体で覚えるしかないので、ある程度時間はかかります。
ただ、専用に時間を取る必要はないので、普段の学習の中で体得していけばいいでしょう。

