当記事は、英語と日本語の発想が異なるため、日本人には浮かんで来にくい英語を扱っています。
今回は、英語では「移動のしかた」と「方向・経路」を分けて表現することについて解説します。
日本語から英作すると複雑になる
She walked across the street.
彼女は通りを歩いて渡った。
この文章は、「移動のしかた」と「方向」を分けて表現しています。
walked :移動の仕方
across :方向・経路
→ She walked | across the street.
他にも例を挙げます。
The boy swam across the river.
少年は泳いで川を渡った。
swam :移動の仕方
across :方向・経路
→ The boy swam | across the river.
He ran into the room.
彼は部屋に駆け込んだ。
ran :移動の仕方
into :方向・経路
→ He ran | into the room.
何を当たり前のことを言っているのかと思われましたか?
読んで、聞いて、理解する分には、極めて簡単です。
ところが、いざ、発話するとなると、このような英語はなかなか浮かんでこないもの。
日本人の英作は、下記のようになりがちです。
・彼女は通りを歩いて渡った。
「渡る」→ cross
「歩いて」→ on foot
→ She crossed the street on foot.
・少年は泳いで川を渡った。
「渡る」→ cross
「泳いで」→ by swimming
→ The boy crossed the river by swimming.
彼は部屋に駆け込んだ。
「駆け込む」→ ??
→ He entered the room running.
She walked across the street.は、動詞がwalked。
She crossed the street on foot.は、動詞がcrossed。
動詞が違います。
日本語では、「歩いて渡る」なので、日本語が影響して、動詞がcrossedに変わっています。
間違いではないので、こう話したとしても、訂正されることはあまりないでしょう。
ただ、ニュアンスは変わります。
She crossed the street on foot.では、わざわざon footを付けているため、「徒歩で」という移動手段に意識が向きます。
He crossed the river by swimming.も同様です。
by swimmingという移動手段に意識が向きます。
単に目の前の光景を描写するなら、
She walked across the street.
The boy swam across the river.
の方がシンプル。
「移動のしかた」+「方向・経路」で考える
英語は、SVを立てた後、情報を後ろに足していく構造をしています。
She walked across the street. であれば、
She walked
と、どのように移動したか、SVで「移動のしかた」が言い切られています。
そしてその後に、
across the street
と、「方向・経路」についての情報が足されている。
また、英語は、視覚的に表現します。
見たままに、歩いていたらwalk、泳いでいたらswimが使われます。
「方向・経路」も、十字にクロスしていたらacross、外から内だったらinto。
見たままの運動・空間が表現されています。
英語の発想は、非常にシンプル。
目の前で起きている運動を、そのまま言葉にしています。
これを、真似ましょう。
(日本語の「渡る」「駆け込む」に当たる英単語を探すのは止めましょう)
いくつか例を挙げますので、ご確認ください。
He climbed over the fence.
彼は柵をよじ登って越えた。
climbed :移動の仕方
over :方向・経路
→ He climbed | over the fence.
She crawled under the table.
彼女は這ってテーブルの下に入った。
crawled :移動の仕方
under :方向・経路
→ She crawled | under the table.
The bottle floated down the river.
ボトルが浮いて川を下った。
floated :移動の仕方
down :方向・経路
→ The bottle floated | down the river.
He rushed out of the house.
彼は急いで家を飛び出した。
rushed :移動の仕方
out of :方向・経路
→ He rushed | out of the house.
She stumbled across the street
彼女はよろめきながら通りを横切った。
stumbled :移動の仕方
across :方向・経路
→ She stumbled | across the street
They squeezed through the gap
彼らは隙間をすり抜けた。
squeezed :移動の仕方
through :方向・経路
→ They squeezed | through the gap
この発想のいいところは、「移動のしかた」と「方向・経路」の組み合わせを変えて、自分でさまざまな表現を生み出せることです。
たとえば、「方向・経路」を変えると、
She walked across the street.
→She walked along the street.
彼女は通り沿いに歩いた。
The boy swam across the river.
→The boy swam down the river.
少年は川を泳いで下った。
「移動のしかた」を変えると、
He ran into the room.
→He rushed into the room.
彼は急いで部屋に飛び込んだ。
He climbed over the fence.
→He jumped over the fence.
彼は柵を飛び越えた。
run intoは熟語?|覚える表現と生成する表現
ここで、熟語・句動詞として習った、「偶然出会う」という意味のrun intoとは何が違うのか、整理しておきましょう。
I ran into an old friend.
古い友人に偶然出会った。
これは、「~にぶつかる」という意味が発展し、「偶然出会う」という意味でも使われるようになったものと考えられます。
熟語化しており、runとintoは、一体のものとして、
I ran into | an old friend.
と扱います。
He ran into the room.(彼は部屋に駆け込んだ。)のrun into と、形は同じなので、少しややこしいですね。
なお、run intoから、「偶然出会う」という意味を想起するのは、意味のつながりが感じられるとはいえ、困難です。
一つの言葉として、覚える必要があるでしょう。
同じような例に、下記が挙げられます。
・come across
come across the field「野原を横切って来る」
come across an old photo「偶然見つける」
・go through
go through the tunnel「トンネルを通り抜ける」
go through a difficult time「つらい時期を経験する」
・get over
get over the fence「柵を越える」
get over an illness「病気から回復する」
・get through
get through the door「ドアを通り抜ける」
get through an exam「試験を切り抜ける」
このような熟語は、個別に覚える必要がありますが、逆に言うと、自分で生成できるものは、覚える必要がないわけです。
その場で、「移動のしかた」+「方向・経路」を組み立てることができます。
ただ、日本人学習者は、むしろ熟語の方が得意です。
run into = 偶然出会う
は、比較的さっと口から出る。
一方、
run + into the room
は、なかなか出てこない。
自分で生成する練習はあまりやらないからでしょうか。
暗記で対応できるものは、数に限りがあります。
一方、「移動のしかた」+「方向・経路」であれば、その場で、見たままの光景を表現することができます。
覚えた英語を再生するだけでなく、自分でも英語を作る。
発話では、この力が大切です。
