haveは「Sの領域に何かがある」|発話のための英語

当記事は、日本人には浮かんで来にくい英語を扱っています。

haveは「持っている」だけではない

多くの人は、

I have a car.
私は車を持っています。

のように、

have = 持っている

と理解していると思います。

英語学習者が見慣れている、下の英文も、厳密には「have = 持っている」とは異なるものの、近接した意味として、それほど違和感を感じることなく、理解されているのではないかと思います。

I have two sisters.
姉妹が二人いる。

I have a headache.
頭が痛い。

I have a problem.
問題がある。

Do you have a minute ?
ちょっと時間ありますか。

直訳の「二人の姉を持っている」「頭痛を持っている」は、日本語としては不自然ですが、日英の表現の違いと考えれば、許容できる範囲ではないかと思います。


では、『Winnie the Pooh』に出てくる、次の文はどうでしょうか。

Piglet wasn’t afraid if he had Christopher Robin with him.

「クリストファー・ロビンを持っていたら」では、さすがに、日本語としては無理があると感じられます。

このような、日本語と発想が違う英語は、読んで理解することはできても、自分で運用するのは難しいものです。

if he had Christopher Robin with himという英文は、なかなか、日本人には浮かびません。if Christopher Robin was with himとする人が、大多数ではないでしょうか(もちろん間違っているわけではありません)。


そこで、発想を転換して、

have = 持っている

ではなく、

「S have X」=「S の領域に X がある」

という理解に変えることを提案したいと思います。

上の文章をもう一度、「S の領域に X がある」で読み直してみてください。

I have a car.
→ Iの領域にa carがある

I have two sisters.
→ Iの領域にtwo sistersがある

I have a headache.
→ Iの領域にa headacheがある

I have a problem.
→ Iの領域にa problemがある

Do you have a minute ?
→ youの領域にa minuteがある

if he had Christopher Robin with him
→ heの領域にChristopher Robinがいる

すべて、「S の領域に X がある」という共通の発想で、発話が可能であることが分かります。

英語を発話する際には、処理はできるだけ軽くしたいもの。

日本語では、「…を持っている」「…がいる」「…がする」と表現が分かれるところを、一つのイメージで捉えることができれば、格段に処理が楽になりますね。


「S have X」=「S の領域に X がある」で発話可能な英文は、他にもあります。

I have a meeting this afternoon.
午後に会議がある。

We have a party tonight.
今夜パーティーがある。

I had a strange experience yesterday.
昨日、不思議な経験をした。

簡単ですね。

さらに情報を足して、

I have work to do.
わたしはやる仕事がある。

I have a question to ask you.
君に聞きたいことがある。

We have a lot to discuss.
話し合うことがたくさんある。

ここまでは、易しかったと思います。


次はどうでしょうか。

Let’s hear what he has to say.

見慣れた「have to = …しなければならない」があるので、「彼が言わなければならないこと聞いてみよう」としたくなりませんか?

これも、「S の領域に X がある」で理解することができます。

Let’s hear what he has to say.
彼が何を言うのか聞いてみよう。
→ heの領域にwhat to say(何を言うか)がある

what to sayが少し難しいですが、文法的な解釈はひとまず置くとして、

He has something to say.
(彼には言うことがある。)

と同様に考えると、理解しやすくなると思います。

「have to = …しなければならない」を知っているがために混乱を招く、面白い例ですね。

「動いているもの」もhaveの領域

自分で発話する英語としては、少し高いレベルになりますが、haveの領域には「動いているもの」も置くことができます。

たとえば、

We have a lot of things happening this week.
今週はいろいろなことが起きている/予定されている。

things を取り、

We have a lot happening this week.

とすることもできます。

少し難しいですが、会話では便利な表現ですので、余裕があれば練習に加えてもいいでしょう。


下の英文も同様です。

We’ve got a lot going on at the moment.
今ちょっといろいろある。

I have three people waiting for me.
私を待っている人が三人いる。

We have several projects running at the same time.
いくつかのプロジェクトが同時に進んでいる。

物にも「領域」がある

「S の領域に X がある」のSは、人以外でも使うことができます。

なお、記事「英語では出来事を「対象」として捉える」と合わせてお読みいただけると幸いです。

The house has three bedrooms.
その家には寝室が三つある。
→ The houseの領域にthree bedroomsがある

The house has a large garden.
その家には大きな庭がある。
→ The houseの領域にa large gardenがある

この二つは、問題なく理解できることと思います。
また、発話も、それほど苦労しないのではないでしょうか。


日本人が引っかかってくるのは、次のような文です。

The house has a beautiful view of the sea.
その家からは海が美しく見える。
→ The houseの領域にa beautiful view of the seaがある

「The house has X」という、まったく同じ構造であるにもかかわらず、日本人には、発話のハードルが高くなります。

なぜか。

日本語が邪魔をするからです。

訳と比較していただけると分かる通り、この文は、英語と日本語との間に、距離があります。

日本語は、「見える」で終わっているので、日本語の発想では、「見える = can see」が真っ先に思い浮かびます。そうすると、この英文には、なかなか行き着けません。

それに対し、英語はまず、「今から何について話すのか」を考えます。

何について話す?
→ The house

その領域に何がある?
→ a beautiful view of the sea

英語にする
→ The house has a beautiful view of the sea.

「日本語 ⇒ 英語」の翻訳をやめれば、先の二つと同じ「 The house has X」 の構造で作れることが分かります。

英語を話す時は、英語の発想に立つと、発話が楽になります。


下の英文も、同じ発想で表現できる例になります。

The room has plenty of natural light.
その部屋には自然光がたっぷり入る。

The hotel has easy access to the airport.
そのホテルから空港へ簡単にアクセスできる。

The book has a lot of useful information in it.
その本には役立つ情報がたくさん載っている。

日本語から離れると、英語で言えることが増える

このように、「日本語 ⇒ 英語」の翻訳では出てこない英文も、英語の発想に立つと、処理が軽くてすみ、発話が楽になります。

「S have X」=「S の領域に X がある」

は、難しい単語を使うことなく、have で表現できる範囲が広がるのが、嬉しいですよね。


ちなみに、わたしは、アメリカ人から、「分を持っていますか」と日本語で話しかけられたことがあります。

すぐにDo you have a minute ? の直訳だと見当がついたので、会話に支障はなかったのですが、アメリカ人が日本語を話す時には、同じように母国語の影響を受けてしまうのだと分かり、面白く感じました。

また、have = 持っている、minute = 分のように、一語一語置き換えてしまうところも、同じ。

やはり、母国語の影響を受けないようにするのは、誰にとっても難しいことなのですね。

翻って、自分も、きっと奇妙なJapanese Englishを振りまいているのだろうと、改めて感じた次第です。


最後に、「読む分には問題ないが、発話は難しめ」の例文を掲げておきます。

Do you have anything to add?
何か付け加えることはありますか。

I have nowhere to go.
行くところがない。

The company has several major projects underway.
その会社ではいくつかの大きなプロジェクトが進行している。

The engine has a problem.
エンジンには問題がある。

I had trouble finding the hotel.
ホテルを見つけるのに苦労した。