仮定法(叙想法)とは
仮定法とは、一言でいうと「妄想」です。
英語では、「現実」と「妄想」をかなり厳密に区別します。
順を追って説明すると、英語には、叙実法(直接法)、仮定法、命令法の3つの主要な文法カテゴリーがあります。例えば、
He is my husband.(彼は私の夫だ)
と言えば、話し手は事実を述べています(叙実法)。
これに対し、下記は仮定法であり、妄想を述べています。
I wish he were my husband.(彼が夫だったらいいのに。でも実際は違う)
仮定法では、話し手は妄想と意識して話し、聞き手も妄想と受け取ります(妄想を伝える専用の型を持つ、英語とは面白い言語です)。
『ハリー・ポッター』でも仮定法は頻繁に使用されており、物語の理解に不可欠の知識となっています。
仮定法現在
動詞は、常に原形と同じ形
叙実法と同じ形をしている場合も多く、その場合は、区別しなくてもあまり支障はありません。以下に、4つ例を挙げます。
・独立文において用いられ、「…したまわんことを!」と祈願を表す
God Rest Ye
神があなた方に安らぎを与えたまわんことを!〈5-23-463〉
※叙実法の「God knows神のみぞ知る」では、動詞に「三人称・単数・現在」のsがつくのに対し、仮定法では動詞が原形となります。型が明確に異なることに注意。
・譲歩を表す副詞節で用いられ、「たとえ…でも」の意味を表す
Whether we be old and bald
たとえ老いてハゲてても〈1-7-136〉
・lestに導かれる副詞節のなかで用いられる
They will be obsessed with security, lest the Muggles notice anything
マグルに悟られぬよう、憑りつかれたように警備を固めるだろう〈4-1-7〉
・if節のなかで用いられる
if truth be told
本当のところを言えば…〈4-1-9〉
※現代では、叙実法「if truth is told」の方が一般的。
仮定法過去
現実ではない“今”を妄想する
動詞は、一人称と三人称の単数では、be動詞にwereを用い、その他の場合は、叙実法過去の動詞と同じ形で、現在の事実に反する仮想を表します。主節はshould、would、could、mightなど助動詞の過去形で呼応します。
I’d be careful if I were you, Potter.
俺なら慎重になるがな、ポッター〈1-6-116〉
仮定法過去完了
“過去をやり直したい”気持ち
動詞は、叙実法過去完了と同じ形で、過去の事実に反する仮想を表します。主節はshould、would、could、mightなどに have + p.p.(過去分詞)がついた形で呼応します。
If he hadn’t, he might have found it harder to concentrate on drills
もしそうでなかったならば、彼がドリルに集中することは難しかっただろう〈1-1-3〉
If Harry had wanted de-boning he would have asked.
ハリーが骨を抜きたかったのなら頼んでいたはずさ ⇒ 頼みもしないのにハリーの骨を抜くなんて(ひどい)!〈2-10-184〉
if S were to
まず起こらない未来を妄想する
あり得べからざる未来の仮想を表し、主節はshould、would、could、mightなどで呼応します。「仮に」「万が一」などの訳を入れると、この形の意味がより明確になります。
if the Ministry were to call …
万が一魔法省がやってきたりしたら…〈2-4-53〉
how odd this would look if a Muggle were to walk up here now …
仮に、今、ここにマグルが現れたなら、どんなに奇妙に見えることだろう〈4-6-63〉
Then if I were to go to the Hog’s Head tonight, I would not find a group of them
では仮に、私が今夜ホグズ・ヘッドへ行ったとしても、彼らを見ることはないのだね〈6-20-370〉
if it were not for、if it had not been for、without、but for
「もし…がないならば」「もし…がなかったならば」の決まり文句
You wouldn’t even be here if it weren’t for my dad !
あなたがここにいるのも、父さんのおかげなんだ!(=父さんがいなかったら、あなたはここにはいない)〈3-14-303〉
Uncle Vernon might still have been able to make his deal – if it hadn’t been for the owl
それでもまだ、ヴァーノン叔父さんは取引をまとめることができたかもしれなかった…。もし、フクロウのことがなかったならば〈2-2-20〉
Without it, I could never have formed our plan …
もしそれがなければ、計画を練ることはできなかった〈4-1-9〉
But for the strange angle of his arms and legs, he might have been sleeping
手足は妙な方向に曲がっていた。そのことさえなければ、彼は眠っているようだった〈6-28-506〉
ifの省略
ifを省略して、仮定法の動詞を主語の前に出す
had he been less preoccupied, Harry would have realised that the absence of Neville’s usual snores
もしそれほど頭が一杯になっていなかったら、ネヴィルのいつものいびきが聞こえていないことにハリーは気づいただろう〈4-14-191〉
The attack might have succeeded had it not been for the fact that they unwittingly chose to stage the attack right outside a compartment full of DA members
襲撃は成功したかもしれなかった。もし、愚かにもDAメンバーで溢れる客室の前で襲うようなことをしていなかったならば〈5-38-795〉
願望・祈願を表す仮定法
I wish I knew what this means !
この意味を知りたいんだ!〈1-16-283〉
Ah, if Harry Potter only knew !
ああ、ハリー・ポッターが分かって下さったら!〈2-10-188〉
仮定法の特殊用法
It is time に続く形容詞節の中で、仮定法過去を用いて「…すべき」の意味を表す
It is time somebody took this class in hand.
誰かがこのクラスを鍛えねばならん〈3-9-181〉
it’s time you ordered a new broom.
新しい箒を発注すべきだ〈3-12-259〉
as if
話者があり得ない妄想と認識しているとき、仮定法が用いられる(そうでない場合は叙実法)
(Hagrid) bent it into a knot as easily as if it had been made of rubber …
ハグリッドは、まるでゴムでできているかのように、簡単に銃を折り曲げると、結び目をつくってしまった〈1-4-51〉


